Ender3 V2入手後1年 総括

Posted: 2022/07/12
Category: 知性

Ender3 V2を導入して1年と少し経った。使い込んでいく中であった方がいいもの・なくても良かった物等見えてきたのでまとめる 購入直後に書いた記事の時点では以下のパーツを投入していたが、これらの有効性・弱点なども見えてきたのでまとめておこうと思う。

目次

追加したパーツ群 総括

Zシャフト保持するやつ (Ender 3 Lead Screw Stabilizer)

実際の所このスタビライザーを入れる意味があるのかどうかはわからないままだが、暴れさせといていいこともないだろうという考えは1年経った今でも変化はない。

ところが本パーツを装着した状態で10ヶ月ぐらい運用していたところ、アルミフレームにネジで固定する台座部分とベアリング台座部が破断する形でスタビライザーが破損した。

赤線部分でブチ折れた

積層方向に垂直な力が掛かるのは明らかなのでどう考えてもそのうち壊れる形状であり、インフィルケチりまくった上に造形品質も怪しかったなど壊れる原因しかないパーツではあったが、壊れそうな部品を破壊する程度の揺れがあることは事実なようなので ある程度意味はあるんじゃないでしょうか。そんなこんなで新しくスタビライザーをプリントして今も使い続けている。

エクストルーダーにフィラメントが入るところをベアリングで支えるやつ (Ender 3 V2 Filament Guide)

これも精神安定剤シリーズの一つで必要性が謎なパーツの一つではあったが、フィラメント受けの白い円盤部にマーキングしとくと遠くから見てもきちんとフィラメントが送れていることが一目でわかるのでなかなかよかった。

一方で、その白い円盤部がベアリングにはめ込み固定されているだけ 1 なので、円盤部がベアリングから外れて意味をなさなくなる事案が何度か発生していた。ベアリングなんかなくても大丈夫という事実の裏返しではあるもののどうにも気分が悪い。

調べたらV溝付きの樹脂ベアリングとかいう完璧な製品が市場に存在していた。よく考えてみたらTHE MAKINGとかでよく出てきますねこういうローラー。

https://www.monotaro.com/p/3577/8136/ より

というわけで安定感のあるガイドが完成です。既製の規格品使えば使うほど品質が上がることは最初からわかってるんだけど、素人はその部品の名前に辿り着くまでに一苦労だよね~的な遠回りをやる羽目になった。

今までよりも確実にフィラメントを保持してくれていることからくる安心感とそれっぽい見た目から得られる満足感がなかなか素晴らしい。本物の部品を使うためのパーツ作りはかなりおすすめです。

簡易ツールホルダー (Ender 3 tool holder with card reader and scraper)

ホルダーとしての出来は悪くないが、そもそもセッティング出ちゃえばそんなに六角レンチ出す必要がなかったりして必要なのかこれ?という疑問を抱いていた。

刷ってる時に六角レンチがカタカタ揺れて音がしたりして鬱陶しかった上、スチールラックにプリンタを積もうとしたとき高さの面でツールホルダーが邪魔となったのが決定打となり外してしまった。

開けた机とかに設置している場合はいいのかな…ただ六角レンチがそんなに要らない事実は変わらないはずなので、導入直後のセッティング出るまでとか不調に突入したときに嬉しいアイテム感がある。必要に応じてどうぞ。

スプールから巻き取ったフィラメント保持するやつ (Ender 3 Filament Guide)

装着した直後の時点で既に要らんだろこれと思ってはいたが案の定要らなかった。

外すのが面倒という問題から付けっぱなしにしていたが、3Dプリンタ本体をスチールラックに載せるタイミングでスプールを本体脇に置くことにしたのでそのタイミングで外した。

ベアリングを使ったスプールホルダー

スプールをベアリングで保持して回転抵抗を減らす改良は必須と言っていいと思う。

スプール軸をベアリングで支える方式でホルダーを作ったが、スプール外周をローラーで保持する方式のやつとかもあるっぽい。スプールに合わせて軸径違いのホルダー作り直さなくて済むのでそっちの方が筋良さそうだなと思うが作り直すのも面倒なのでそのままになっている。

エクストルーダーギアにフィラメントを押しつけるやつ

正式名称わからん

純正部品が割れた実績があることもあり、絶対アルミ製のものに換えた方が良いとおすすめできるパーツ。

安物プリンタにおける造形失敗の原因なんてのは基本的に送り不良かベッドのクリアランス不良のどちらかなはずで、送り不良の原因もギア滑りかフィラメント経路の問題がほとんどのはず。 押しつけ側を十分強化しておけばギアの清掃・交換だけ定期的に行うことでギア滑りは回避できる。 もちろんノズル詰まりとかに対しては無力だがその辺りは日々のメンテナンスでカバーするしかない。安いので文句は言えない。

大容量電源ユニット

5時間かかるプリントの4時間目でギブアップされる謎現象が2連続で起きたために純正電源からの交換を決意したという経緯は1年前の記事で書いたとおりだ。RWS600B-24に交換してからは10時間オーバークラスのプリントもノーミスでこなしてくれている。 純正のまま稼働させた例を見てないので改善の幅は不明だが、少なくとも悪くはなっていないので交換してよかったと思う。

強いて不満点を挙げるなら雑に作った電源ケースの固定が雑すぎて少し斜めってきたことぐらいだが、両面テープで固定しちまえというこれまた雑な手法で解決した。

余談だが日東電工のハイパージョイント H9012という両面テープが大変良い。耐熱性のある強力両面テープで、炎天下のダッシュボードという過酷な環境に耐えられず転落してしまったカーナビの固定用に購入した。2000円で10mとかあるんで個人のお遊びレベルでは相当使い出があるが、きちんと脱脂・圧着した際の安定性が抜群で安心感がある。

新しく追加したパーツ

SKR mini E3 V3.0

文鎮化させた記事を先に書く羽目になってしまったがメイン基板を交換した。モータードライバ交換で静音化!みたいな記事がインターネッツ上に大量に存在しているのは認識していたが、騒音源のファンが減るわけでもないので手を出さないでいた。

結局雑な作業で純正基板を破壊してしまったことで交換せざるを得ない状況に自ら追い込んでしまったが、実際交換するとモーター駆動音が著しく静かになったので驚いた。

またEnder3 V2純正の基板(4.2.2)と比べると、地味な改良がいろいろと加えられているのも嬉しいポイントだ。 プリント中に本体キーが誤反応してピッと音が鳴ったりしていたのが無くなったし、本体上のジャンパピンでUSBコネクタからの給電をする/しないが切替えられるようになっているので、OctoPrint運用派も気軽にUSBケーブルを繋ぎっぱなしにできる。

コネクタ表とかが割と雑なおかげで雰囲気による接続を余儀なくされたり、間違ったファイル投げ込んだら一発で文鎮化するなどいろいろクセはあるが、そもそも中華3Dプリンタに手を出してる時点でその辺りはどうにかできなければダメなわけなので文句を言う筋合いはない。

ファームウェア書き間違えた件についても、サポートにブートローダー送ってくれメールを送ったら普通にhexファイルを送り返してくれた。返信まで謎に1ヶ月ぐらいかかったがこの辺りの柔軟さはありがたい。

RaspberryPiとリレー

いちいちSDカードにgcode書き込むのとかプリント中ずっとCura起動しっぱなしにするのも面倒になってきたので、余っていたRaspberry Pi 2にインストールしたOctoPrintからプリンタを制御することにした。

OctoPrint公式的にはRaspberry Pi 3以降を推奨ということになっているが、有線でのLAN接続しか信用できないのでオンボ無線とか電力食うだけで不安定要因にしかならないこと、実際のところスペック的には不足がなさそうなこと、Raspberry Pi 2がやたら手元に余っていることなどからRaspberry Pi 2でやることにした。

24V電源にDCDCコンバータを繋いでRaspberry Piを駆動する方法があるようだが、いちいちRaspberry Piの起動なんか待ってられないので常時起動させておきたい。また24V電源が常に回っているとファンがうるさいのでリモートからの電源制御もしたい。

RWS600B-24にリモートON/OFFが付いていれば簡単だったが残念ながら付いていないので、100Vラインを何らかの手段で切ったり繋いだりする必要がある。 普通のリレーは駆動がだるいしSSRはなんか怖い。調べてみたらオムロンのハイブリッド・パワーリレーとかいう製品が5V駆動で比較的気軽に使えそうだったのでこれを使うことにした。

適当にGPIOポートに繋いだらOctoPrintにOctoRelayというプラグインを入れる、WebUIからGPIOがいい感じにいじれるようになるので、WebUIで電源を入れてシリアルポートを繋げば地球の裏側からでもプリントの指示が出せる。

当然ながら実際には物理的な準備がゼロになるわけではないので、準備を済ませた後椅子に座ったままプリント開始することができる程度の変化ではあるが、GUIで気軽に電源スイッチを入れられるのはかなり気分がいい。

不調が出た箇所

もうそろそろ購入後1年ぐらい経つなーと思ったぐらいの時期に壮絶なフィラメントの送り不良が出始めた。ギヤとかノズルかな?と疑って点検なり交換をしても改善しない。またプリント途中の様子を観察しているとどうやらフィラメント送り用のステッピングモーターが脱調しまくってるらしく、定期的にカコンというような音と共にフィラメント送り不良が発生していた。

形状は保ててるけどガタガタ

結論としてはフィラメントを通しているPTFEチューブが熱で劣化しており、エクストルーダー手前部分でフィラメント通過の障害となっていた。PTFEチューブを切り詰めて組み直したら解決した。 周期的に脱調しているようにも思えたのでギヤの摩耗などを疑ったが問題ではなかった。

なんだかんだ不調らしい不調はこの件ぐらいで、あとはたまにテーブルのクリアランス調整をするぐらいで安定して刷れてしまうので想像していたよりは手間が掛かっていない。

フィラメント

結局1年で3kgのフィラメントを消費した。SUNLUのPETGを2kgとPxmalionのPLA1kgという案配。

樹脂の種類

しばらくPETGばかりで出力していたところで久々にPLAを使い直すと物凄く楽でびっくりした。糸は引かないしなんか角がカチッとした造形物ができるしと、標準フィラメントとして採用されるだけのことはある感じの素性の良さを再確認させられた。

とはいえ耐候性の問題だとかでどこでも使えるとは言えないのが難しいところで、結局糸引きその他の問題は目を瞑ることとしてPETGをメインで使っている。

ブランド

Pxmalionとかいう謎のメーカー製フィラメントを使い切った後にSUNLU製のフィラメントを購入したら、Pxmalion製フィラメントは死ぬほど巻きが乱雑だったことがわかった。

巻きが乱雑なのは素材の質がどうとか以前の問題で、印刷を進めていくと突然フィラメントが絡んで送れなくなったりするので造形失敗の可能性が大幅に高まる。

SUNLU製フィラメントの巻きは素晴らしく綺麗で、樹脂の質も高いように思える。ラインナップも豊富なので今後はSUNLU製フィラメントを使っていこうと思う。

吸湿

良く言われる吸湿問題だが、自分のペースで使っている限りでは使用中のフィラメントまで防湿ボックスに入れる必要性は感じなかった。秋から春まで気化式加湿機をフル稼働させたりしていたが特に影響はなかったと思う。

半年とかそういうスケールで使わなさそうなフィラメントをカメラ用防湿ボックスに入れておくぐらいで十分なんじゃないかなという印象。 カメラ用防湿ボックスとか大した値段じゃないので買っとけばいいんじゃないのとは思うが、造形失敗は吸湿云々以前の問題で起きてることが多いように思えるのでお守りアイテムを買うよりメンテナンスに力入れた方が結果的に御利益はあると思う。

今後の展望・感想

MarlinからKlipperにファームウェア差し替えるやつをやりたいなと思っている。 加速度センサー使ってリンギング低減するやつとかは効果が大きそうだし、既にOctoPrintでプリンタを制御する環境が構築してある関係上ほとんど追加投資が要らないはず。

3DTouchとADXL345搭載モジュールを購入したが安定稼働まで持って行くのにそれなりの労力が要りそうだ。 とはいえ、数万円とちょっと?の労力でこれだけ長い間楽しむことができて、おまけに造形物まで出力できるので趣味としてのコスパは圧倒的だと思う。仕事でやれと言われると困りますが…


  1. 接着すればいいのだけどだるくてやってなかった ↩︎